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教育コラム 「先生、その教育もう古いです!」

第1回 「古い教育」って何だ?

昭和の教室

 今回から始まる教育コラム「先生、その教育もう古いです!」。第1回は、これから日本の教育がどのような方向に進んでいるのかを紹介したいと思います。
 今までの日本の教育は、「知識の量が多い」「処理のスピードが速い」ことが求められていて、それは「知識偏重」「詰め込み」という問題点を抱えていましたが、現在もその根本は変わらないまま続いています。
 しかしITが急速に進化する現代では、何かを調べようと思えばググればいいし、EXCELを使えば瞬時に計算は処理できます。求められているのは知識量や処理能力ではなく、その次の段階なのです。それが何なのかを考えるにあたり、「学力の3要素」を確認しましょう。これは学力を測るための指針として、学校教育基本法に定められているものです。

① 知識・技能
② 思考力・判断力・表現力
③ 主体的に学習に取り組む態度


 ①は知識量や処理能力等、私たちが知っている「今までの学力」です。それに対して②は、「その知識を使ってどう考えるか」を、例えば「あなたの意見を述べなさい」という形で表すことが求められます。また③では、今までの学びの記録や課外活動等を基に、積極的に学習する姿勢が評価の対象となります。
 そして①だけでなく②や③も入試で測るよう、大学入試が大きく変化しようとしています。これが最近ニュースでよく登場する「2020年大学入試改革」の根底にあるのです。
 今まで私たち学習塾はテストに向けて、「どれだけ覚えているか」「どれだけ正確にできるか」を子どもたちにに求めてきました。しかし大学入試が変わることになると、これからは②や③の要素にも対応できるような指導が私たちに求められるのです。
 ここで間違えてはいけないのが、①の要素は否定されていないということです。以前導入された「ゆとり教育」では①の部分が削減されて、「学力低下」という問題を招きました。しかしこれから目指す教育では、①を前提に②や③に対応することが求められているのです。
 つまり「古い教育」は①に偏った指導、「新しい教育」は①を前提として②や③を伸ばす指導、と考えるべきなのです。そしてそれは学校現場だけでなく、学習塾等でも求められます。これからの数年間は、様々な教育現場で大きな転換点を迎えることになるでしょう。

第2回 日本の英語教育はどう変わる?

英語学習

 以前から言われていたことですが、今までの日本の英語教育は文法を重視し、会話を軽視していたから、実用的な英語力が身に付かないと批判されていました。グローバル化が急速に進行し、国際的な競争力が求められる現代の世界において、英語が使えないことは致命的な問題です。
 この状況を改善するために、小学校から英語が本格的に導入されましたが、大学入試も大きく変わりつつあります。その中でも話題となっているのが、センター試験の代わりに導入される「大学入学共通テスト(仮称)」で、民間が実施する資格・検定試験を活用することです。具体的には、英検やTOEIC、TOEFLだけでなく、GTECのような新しい検定試験が挙げられます。
 ここでポイントになるのが、下の段にも掲げた「読む・聞く・話す・書く」の4技能で、現代の英語学習ではこの4つのスキルをまんべんなく身につけることが求められています。今回の大学入試改革でもこの4技能を測れるよう、外部の試験を利用することが検討されているのです。

英語の4技能・・・読む・聞く・話す・書く

 この変化に対応するために、学校では上記の4つのスキルを身に付けられるような指導が求められています。小・中・高を通し、今までの文法一辺倒の指導内容から脱却し、今まで以上に生徒が英語に興味を持ち、実用的な力を身に付けられるようなアプローチが必要とされています。
 しかしそのような指導に対応できる教員は少ないのが現状で、特に公教育の現場では教員の力量の差が大きく表れる可能性があります。私学においても、意欲的に改革を進める学校とそうでない学校の差が見えつつあります。そうなると各家庭においては、「学校選び」が今まで以上に重要になります。今までとは全く異なる英語教育を導入している学校でどのような授業が展開されているのかを、具体的に知っておきたいものです。
 そして入試だけに目を向けるのではなく、日頃からどのように学習するかを意識すべきです。特に「話す」ことについては、前回お話した「学力の3要素」の中にある「主体的に学習に取り組む態度」に直結するポイントになるので、小学生のときから様々な人たちと積極的にコミュニケーションを図ることは、その後に様々な形で役立つはずです。
 昔と同じことをしていたら、世界の変化に対応できません。海外にいても、日本にいるのと同じように過ごしていたらアドバンテージは生み出せません。今ここでどう過ごすかによって、お子様の将来は大きく変わるかもしれないのです。

第3回 記述式の問題が増加する!

記述

 大学入試改革での大きな変更点として、現行の「センター試験」が「大学入学共通テスト」に変わることが発表されていますが、この中で注目されているのが、今までのマークシート式だけでなく、新たに国語・数学で記述式の問題が登場することです。
 ここでのポイントは、「知識だけでなく思考力・表現力も問うこと」と、「学んだことを実生活に結びつけて活用すること」です。今までのマークシート式の問題では、「知識の量」を問うことはできても「思考の質」を見ることは難しかったので、記述式の問題を加えることによってバランス良く学力を測れるようになります。
 しかしこの変更に対して疑問の声も上がっています。例えば「国公立大学では二次試験を課しているので、そこで記述式の問題が出題すれば十分だ」とか、「記述式の採点は手間がかかるので人員・経費の負担が大きくなり、結果が出るまで時間がかかる」、あるいは「記述式の問題は採点する人によって点数に差が生じるので、公平でなくなる」という意見が出されています。これらの批判は、今までの方式との比較を考えれば当然ですが、逆にこの議論から「日本の問題点」が見えてくるとも考えられます。
 以前から「点数は取れても実践的に使えない」「自分の意見を話すことができない」ことが、様々な場面で日本人の一般的な弱点として表れていて、その原因として入学試験での知識偏重の傾向が問題視されていました。グローバル化が進む世界において日本が発展する(というより生き残る)ためには、教育の手法を改革するのは必然であり、その一環として記述式の問題が増加するのは自然の流れなのです。現に中学入試では、随分前から記述式の問題が増加する傾向にあります。
 また「効率性」や「公平性」を重視する考え方は日本人の中に割と強くありますが、あくまでもそれは規格品を生産する場では重要であっても、教育においてはそれ以外の側面も大事にされるべきです。時間や手間をかけてでも本質を追究する姿勢は、新しいものを生み出すときや難しい問題を解決するときに必要となるものです。
 今まで日本が発展してきた時代では、今回の改革で取り入れられようとしている「思考力・表現力」はあまり重要視されていませんでした。しかしそれは数十年前の話であり、今を生きる私たちは現実を直視し、未来を生きる子どもたちのために考え方をアップデートしなければいけないのです。この教育改革は、私たち大人の思考にも改革を迫っているのかもしれません。

【第4回】 子どもたちには時間がない?

時間割

 経済協力開発機構(OECD)が先日発表した、2030年の教育のあり方を展望する「エデュケーション2030」は、これからの生徒は「新しい価値を創造する」「緊張とジレンマを調和する」「責任を取る」等の「問題解決型能力」を身につけるべきと提言しています。2020年から日本で実施される「大学入試改革」は、この流れに沿った動きと言えるでしょう。
 さてこの提言では、世界的な傾向として生徒たちに「学習や睡眠、運動をする十分な時間がない」と指摘し、「長時間の学習から質の高い学習に変える時が来た」として、学校のカリキュラムを見直すよう求めています。新しい能力を身に付ける(=新しいプログラムを追加する)には、今までのプログラムを整理しない限り、やるべきことが飽和してしまい、子どもたちへの負荷はますます強くなってしまいます。
 しかしこれは学校だけの問題ではないと、私は感じています。小学校低学年から様々な習い事をしている子どもたちを見ると、時間的な余裕がなく疲れてしまい、学習に限らず様々な物事に対してネガティブな感情を持っているケースが少なからず見られます。我が子に多くのチャンスを与えたいという親心が、逆にお子様の健全な成長を阻害してしまう可能性があるのです。

① 知識・技能
② 思考力・判断力・表現力
③ 主体的に学習に取り組む態度


 ここで以前ご紹介した「学力の3要素」を、改めて確認しましょう。今までの日本の教育は①を重視していましたが、これからは②や③(前述の「問題解決型能力」につながるポイントです)も学力として求められます。
 また「効率性」や「公平性」を重視する考え方は日本人の中に割と強くありますが、あくまでもそれは規格品を生産する場では重要であっても、教育においてはそれ以外の側面も大事にされるべきです。時間や手間をかけてでも本質を追究する姿勢は、新しいものを生み出すときや難しい問題を解決するときに必要となるものです。
 しかし余裕がなく疲れている子どもたちは、②が鈍り、③が弱くなり、結果的に①が身に付かなくなります。よく私たち日本人は「努力した分だけ結果はついてくる」と、多くの時間をかけて取り組むことを美徳とする傾向がありますが、子どもに対してはそれぞれの成長段階やタイミングを踏まえたアプローチが必要なのです。
 私たち学習塾も、ただ単に勉強をやらせるのではなく、「興味を持てる授業」や「効果的な学習方法」等、「質の高い学習」について真剣に考え、実践すべきです。大量の課題を与えて勉強漬けにすれば、ご家庭は安心するかもしれませんが、それでは①だけに偏り、未来を生きる能力は身に付きません。
 急速に変化する世界において、人々に必要とされる能力も変化しています。私たち大人は、旧来の方法論を押し付け、目先の結果ばかりにこだわるのではなく、未来型の能力をバランスよく子どもたちが備えられるよう、導いていきたいものです。

【第5回】 世界で通用する英語力を身に付けるには?

英会話

 海外の学校に通っていた生徒を対象にした「帰国生入試」では、一般入試と異なる科目(例えば作文・小論文等)を取り入れることがあり、特に英語については高いレベルの問題を課したり、大学入試ではTOEFL等のスコア提出が必須となる動きもあります。また中学入試では英語入試を導入する学校がここ数年で大幅に増加しています。
 このような入試は、主にインター校に通う生徒が対象になるので、それ以外の方には関係ないように見えますが、例えば大学入試の場合、帰国生入試がAO入試に衣替えし国内生も対象になるケースが見られ、中学入試でも同様のケースが見られます。求められるのは「どこにいたか」ではなく、「どのような英語力を身につけたか」なのです。
 ここでカギになるのが、「読む・聞く・話す・書く」の4技能に対する取り組みです。今までの日本の英語教育は、文法や単語の暗記を重視する分、実用性に欠けるのが課題でした。そこでこれからの入試は4技能をバランスよく問う形式に移行しつつあるのです。
 例えば、中学受験で導入されている英語入試では、従来の文法・読解問題だけでなく、エッセイライティングでは自分の考えを述べることも要求され、筆記試験以外で英語での面接を実施している学校も見受けられます。よく「英検何級があればいいですか?」と質問を受けることがありますが、多くの入試では知識の量や正しい運用能力を前提として思考力やコミュニケーション能力も見られるので、インター校に通った経験がないと対応が難しいでしょう。
 しかしここでのポイントは、「入試のために何をするか」ではありません。入試はあくまでも通過点、入学後にどのような力を身につけられるかがより大事です。たとえ小学生の頃に英語を話せたとしても、その後に必要な知識を身につけなければ、社会に出てから役に立ちません。ただし小さい頃から外国語に慣れておけばその後の吸収力は高くなりますので、(英語圏でなくても)海外に住んでいる環境上の利点は生かしたいものです。
 未来を生きる子どもたちには、私たちが求められていた以上の語学力が要求されます。そのすべてを小中学生のうちに身につける必要はありませんが、今のうちにいろいろな経験をしておけば可能性は広がります。まずは子どもたちが外国語に興味を持ち楽しく学習できるような環境を用意すること。そして実際に様々な人々と話す機会を持つこと。身近な目標としての英検取得だけに限定せず、将来に向けての視点を持って大人側は考えたいものです。