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教育コラム 「先生、その教育もう古いです!」

【第4回】 子どもたちには時間がない?

時間割

 経済協力開発機構(OECD)が先日発表した、2030年の教育のあり方を展望する「エデュケーション2030」は、これからの生徒は「新しい価値を創造する」「緊張とジレンマを調和する」「責任を取る」等の「問題解決型能力」を身につけるべきと提言しています。2020年から日本で実施される「大学入試改革」は、この流れに沿った動きと言えるでしょう。
 さてこの提言では、世界的な傾向として生徒たちに「学習や睡眠、運動をする十分な時間がない」と指摘し、「長時間の学習から質の高い学習に変える時が来た」として、学校のカリキュラムを見直すよう求めています。新しい能力を身に付ける(=新しいプログラムを追加する)には、今までのプログラムを整理しない限り、やるべきことが飽和してしまい、子どもたちへの負荷はますます強くなってしまいます。
 しかしこれは学校だけの問題ではないと、私は感じています。小学校低学年から様々な習い事をしている子どもたちを見ると、時間的な余裕がなく疲れてしまい、学習に限らず様々な物事に対してネガティブな感情を持っているケースが少なからず見られます。我が子に多くのチャンスを与えたいという親心が、逆にお子様の健全な成長を阻害してしまう可能性があるのです。

① 知識・技能
② 思考力・判断力・表現力
③ 主体的に学習に取り組む態度


 ここで以前ご紹介した「学力の3要素」を、改めて確認しましょう。今までの日本の教育は①を重視していましたが、これからは②や③(前述の「問題解決型能力」につながるポイントです)も学力として求められます。
 また「効率性」や「公平性」を重視する考え方は日本人の中に割と強くありますが、あくまでもそれは規格品を生産する場では重要であっても、教育においてはそれ以外の側面も大事にされるべきです。時間や手間をかけてでも本質を追究する姿勢は、新しいものを生み出すときや難しい問題を解決するときに必要となるものです。
 しかし余裕がなく疲れている子どもたちは、②が鈍り、③が弱くなり、結果的に①が身に付かなくなります。よく私たち日本人は「努力した分だけ結果はついてくる」と、多くの時間をかけて取り組むことを美徳とする傾向がありますが、子どもに対してはそれぞれの成長段階やタイミングを踏まえたアプローチが必要なのです。
 私たち学習塾も、ただ単に勉強をやらせるのではなく、「興味を持てる授業」や「効果的な学習方法」等、「質の高い学習」について真剣に考え、実践すべきです。大量の課題を与えて勉強漬けにすれば、ご家庭は安心するかもしれませんが、それでは①だけに偏り、未来を生きる能力は身に付きません。
 急速に変化する世界において、人々に必要とされる能力も変化しています。私たち大人は、旧来の方法論を押し付け、目先の結果ばかりにこだわるのではなく、未来型の能力をバランスよく子どもたちが備えられるよう、導いていきたいものです。