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教育コラム 「先生、その教育もう古いです!」

【第6回】 論述力が問われる前に読解力が問題に?

読解力?

 2020年から導入される大学入試改革より、「知識・技術」だけでなく「思考力・判断力・表現力」等の学力も重要視され、今までとは異なる出題形式も登場します。現在文科省から発表されている国語の問題例を見ると、資料を読んでそれに対する自分の考えを述べる問題があり、マークシート方式で実施されている現行のセンター試験に新しい側面が加わることになります。
 このような論述問題に対しては、「大量の問題を反復演習する」「解法パターンに当てはめる」ような今までのテクニックが通用しない以上、これから様々な教育現場で試行錯誤が繰り広げられる可能性があります。そうなるとご家庭としては「何をすればいいのか?」と不安になるかもしれませんが、実はそれ以前に重要な問題が最近登場しているのです。
 それは「読解力の低下」です。昨年発表された国立情報学研究所の調査結果によると、2~3行程度の課題文および質問の内容を把握できない中高生が相当数いることが明らかになりました。以前に比べて生徒の読解力が低下していることは私も授業を通して感じていたのですが、やはりそれが現実なのです。そしてこれは国語だけでなく、他教科を学習する際の理解度低下にもつながっているので、根本的かつ深刻な問題なのです。
 文章の内容を理解できない要因は色々ありますが、「文章を読むことに慣れていない」ことが大きな原因かと思われます。コミュニケーション手段がSNS中心になると、狭い世界の中で少しの言葉だけしか使わない生活になるから、文章を読むことが面倒になり、学年が上がれば伸びるはずの語彙力や読解力が身につかなくなります。特に中学生になると、スマホを使ってLINE等で友達と交流する機会が多くなるので、その傾向に拍車がかかります。
 また海外では、どうしても日本語に触れる機会が少なくなりがちです。特に小学校低学年からインター校に通っている場合、保護者の方が早い段階から取り組ませないと、漢字を嫌がり、日本語の文章を読まない、基礎的な国語力に不安を抱える生徒になってしまいます。ご家庭での読み聞かせ、読書の習慣、塾での学習等、いろいろなツールを複数組み合わせて、お子様が国語に対して抵抗感を持つ前に積極的に動くことがポイントです。
 国語力が伸びるには時間がかかるので、長期的な取り組みが必要です。またこれからはテクニックだけでは通用しない出題形式がどの教科でも多くなり、論述問題はその一環であるとも言えます。しっかりと読解力を身につけ、その上で論述問題や作文・小論文に対応するには、時代や環境の差も念頭に入れながら、意識的に大人側が導いていきたいものです。

【第7回】 帰国生は大学入試改革でチャンスが拡大?

チャンスをGET!

 大学入試改革からの変化を見据え、私立中高一貫校をはじめとする各高校は、現行のカリキュラムに新しい要素(例えばアクティブラーニングや英語による授業等)を加え、今までより実用的かつ魅力的な学習内容を生み出そうとしています。そのような新しい教育に対応できる優秀な生徒を集めることも同時にポイントになり、ここで帰国生が注目されているのです。
 分かりやすい例として、中学入試で英語を導入する学校がこの数年間で大幅に増加したことが挙げられます。英語を話すことができる生徒の人数が増えれば、周りの生徒が影響を受け、全体の学力レベルが上がり、大学への合格実績が向上します。そして大学入試改革以降、実践的な英語力が更に求められるようになるので、そのような学校はますます有利になるでしょう。
 英語力だけではありません。異国の地で様々な人々と触れ合ってきた帰国生は、その経験を生かして学校内で先頭に立って活躍することが多々あります。ここで発揮されるコミュニケーション能力は、「学力の3要素」の一つである「主体的に学習に取り組む態度」の「協働性」において、ますます重要度が高くなります。
 このような経験や能力は、書類選考では提出書類・志望理由書・自己アピール等、筆記試験では作文や小論文、そして面接で評価されます。特に作文や面接は、帰国生入試では学科試験と共に実施されているケースが多いのです。そしてこれらの内容は、これからの大学入試改革で多様化する選抜方法の一つとして重要な役割を担います。これは帰国生にとってプラスの要因になると言えます。
 ただしここで注意しなければいけないことは、単に「帰国生だから入試で有利になる」とのではなく、「学校側が求めているもの」つまり「これからの世界において必要とされている能力」を有しているかどうかがポイントになる、ということです。それは英語力だけでなく、コミュニケーション能力だけでなく、思考力やアウトプット能力等も含まれます。もちろんこれらを支える学力(知識・技能)は大前提となります。
 これからの時代を生きる子どもたちが身につけるべき能力は、取り巻く世界が広がり、技術が高度化する中で、私たち大人が育ってきた時代よりも多岐にわたります。子どもたちが現時点ですべての能力を身につける必要はありませんが、この海外生活を通していろいろな力を吸収できる下地を養えるかどうかは、周りの大人たちがどのように関わるかによって大きく変わります。帰国生入試は、そのきっかけの一つになるかもしれませんが、その先こそが重要なのです。

【第8回】 インター校生は大学入試改革で有利になる?

プレゼン

 前回のコラムでは、大学入試改革と帰国生入試の関係を話しましたが、さらに絞って話をすると、インター校に通った経験のある生徒は、今回の大学入試改革で有利になると考えられます。ポイントは次の通りです。

① 実用的な英語力が求められる
 世界的により実用的な英語力が必要とされる中、大学入試でもTOEFLやGTEC等の民間試験を導入する可能性が出ています。これは国内生にとっては高いハードルですが、日頃から英語で学習してきたインター校生はチャンスが広がります。

② 思考力を問われる形式に強い
 インター校での授業では、ただ単に答えを覚えるのではなく、「なぜそうなるのか」が問われる機会が多くなります。日頃からそのような意識を持って問題に取り組むので、論理的な思考力が養われます。

③ 表現力で経験の差が出る
 インター校ではプレゼン等で発表する機会が多いだけでなく、他の生徒の発表を聞く機会も得られるので、様々な例を見ることができます。このような表現力はマニュアルで得られるものでなく、経験を通して培われる面が大きいのです。

④ 記述問題への対応力
 インター校では学年が上がると毎週のようにレポートが課されることもあります。言語が違っても書くこと自体に慣れているので、字数が多い記述問題に対しても構成を意識して書くことができます。

⑤ 書類選考でのアピール材料
 インター校では、ボランティアや課外活動も活発に行われることもあります。選抜方法が多様化し、志望理由書・小論文・面接等が登場する機会が広がると、そのような経験はアピール材料になります。

 以上挙げてみましたが、これは大学入試だけでなく、高校入試・中学入試でも同じような傾向があります。どの入試においても、インター校経験を持っていることがプラスに働く可能性があるのです。
 ただし次の2つの点を忘れないでください。基本的な話ですが、海外で学習するインター校生は、これがどれだけできるかで、今後の伸びが大きく変わるのです。ご家庭の中で常に意識して、お子様と一緒に確認して頂けたらと願います。

★ ただ単にインター校に通うだけで英語等の学力が伸びるわけではありません。積極的に学校生活でコミュニケーションをとり、課題に対ししっかりと取り組むことが、大きな差につながります。
★ どの入試制度でも、今まで必要とされていた学力(知識・技能)が備わっていることを前提にしています。日本の学校に通う以上、日本式の学習に対応できるよう、海外にいる間に準備を進めることが絶対に必要です。

【第9回】 アクティブラーニングって何?

タブレット

 日本の子どもたちの学習に対する関心・意欲は、世界各国の中でも低い方だと統計調査で出ています。これは私たち教育に関わる日本人がもっと危機感を持つべきテーマだと思います。
 今までの日本の教育は、教師が数十人の生徒を指導する集団授業が中心でした。この形式は、多くの生徒に多くの知識を伝えることができて効率的ですが、学習内容を理解できない生徒も多くなる欠点もありました。これを解決するために、能力別クラス編成・少人数クラス・個別指導等の形が登場し、(欧米諸国に比べればまだ多い方ではありますが)昔に比べれば一人ひとりを細かく見ていける状況にはなっています。
 しかし根本的な問題は解決されていません。1クラスあたりの人数が少なくなっても、教師が一方的に指導するだけでは、生徒のモチベーションを引き上げるのは難しいのです。そこで登場したのが「アクティブラーニング」です。生徒たちがグループ単位で学習し(議論や発表、教え合い等)、受け身ではない姿勢で学習することを目指します。
 内容についても、教室での授業だけでなく、実体験を通して興味・関心を引き出すことも有効な手段になります。インターネット等のITを利用した学習も積極的に活用します。各自でテーマを設定して、時間をかけて論文作成に取り組むのも一つです。このような多様なアプローチを通して、新しい能力を身につけることを図ります。
 このような指導を、私も数学の授業で実践することがあります。実際に立体を作ってみたり、議論を通して公式を導き出したり、グループに分けて問題をチーム戦で競い合ったりします。ここでは私の役割はファシリテーター(進行役)で、生徒たちが自力で答えを出すのを見守る側です。途中で私が説明しようとすると、多くの生徒が「ちょっと待って!」と阻止します。普段の授業以上に彼らは熱中し、答えを出せたときの盛り上がりは相当なものです。「学習塾は受験に向けてのテクニックを教えるところ」とお考えの方には意外に映ると思いますが、テストの点数や合格実績を追い求める前に、私たちがやるべきことはあるのです。
 大学入試改革で今までの知識重視の傾向から、様々な学力を測る方向に変化すれば、学習の在り方や授業の進め方も今までとは異なるアプローチが求められます。入試の選抜方法においても、アクティブラーニングの要素が取り入れられつつあります。時代と状況の変化を踏まえ、私たち教育関係者が積極的に実践に移すことが今こそ必要であり、その意識・行動の差が今後数年で大きな差につながるのではないかと感じています。

【第10回】 中学受験で英語入試が増えてどうなる?

5教科

 以前少し書きましたが、中学受験で英語入試を導入した学校がこの4年間で7倍に増加しています。大学入試改革で英語の民間試験が導入され、実践的な英語力が求められる中で、そのような力のある生徒を取り込んでいきたいのが学校側の狙いです。実際に各学校の先生から聞くと、英語を話せる生徒が多くなればクラスの中で英語が飛び交い、周りの生徒が刺激を受けて結果的に全体のレベルが上昇する流れができるようです。
 ここで対象になるのはインター校や欧米の現地校生ですが、それ以外の生徒(日本人学校生や国内生)も英語力があれば受験できるので、予想以上に多くの受験生が英語入試に集まっています。前年度の入試結果を見ると、英語に力を入れていて人気が上昇している学校には帰国生入試でも多くの受験生が集まり、倍率も急上昇しています。そうなると合格するためにはより高い英語力が求められ、そのための対策が必要となり、さらに全体のレベルが上がり、・・・という循環が生まれます。
 この現状を、中学受験を目指すインター校生のご家庭はしっかり認識する必要があります。「インター生は英語を利用して受験すれば有利になる」という考え、はっきり言って甘いです! 英語だけで勝負するならば欧米の現地校生と同じかそれ以上のレベルを身につけなければいけません。しかもそのような入試タイプの学校はあまり多くないので、一般入試よりも高い倍率(4~5倍)になるところもあります。インター校に通って身につく英語力よりもさらに高いレベルを求められるので、しっかりと入試対策を進めておくことが求められます。
 英語に対してそこまでの経験や自信がなければ、中学受験レベルの国語・算数をしっかり学習する必要があります。帰国生入試は一般入試よりも問題が易しくなると言われていますが、それでも算数は中学入試特有の問題(つるかめ算・流水算などの文章題)が出題されますし、人気が高い学校では出題レベルや競争倍率が一般入試と同じくらいになります。また学校によって入試科目の組み合わせは異なるので、国語・算数・英語どの科目でも対応できるように準備して、受験校を幅広く選択できるようにするべきです。実際のところ、バンコクから中学受験するインター校生は、このパターンで力を発揮できる生徒が多いと思います。
 英語で受験できる中学校が増えて、インター校生にとって選択肢は広がりました。しかしそれ以上に受験者数が増えて、競争レベルや倍率が予想以上に上がっています。「行きたい学校」に合格するには、これからますますレベルが上昇する可能性があることへの覚悟と、それを踏まえての十分な準備期間が必要なのです。