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教育コラム 「先生、その教育もう古いです!」

【第21回】 長時間勉強すれば成績は上がる?

勉強し過ぎ

 最近の高校野球では、投手のケガ・故障を防ぐために投球数を制限しようと議論になっています。一部の方は「そのような考えは甘い!」と反対していますが、現在は精神論よりもスポーツ医学に基づく意見を支持する声が多数派になっています。
 それに対し勉強は、「長時間学習して、より多くの問題を解けば力がつく!」と考えている方は多いかと思います。もちろん受験学年では志望校合格に向けて、今までより多くの学習量をこなさなければいけないので、(志望校に向けてのモチベーションを前提とした)気合や根性も必要です。問題は「受験学年以外にどのように学習するか」で、この時期に重要なのは、「学習方法の確立」「基礎学力の定着」「学習内容に対する興味」だと私たちは考えています。
 長時間勉強してケガをすることはありませんが、疲れがたまり集中できなくなり、非効率でダラダラした学習になります。また与えられた問題が多過ぎれば、時間に余裕がなくなり、答えを出すだけのやっつけ仕事になります。間違え直しをしなければ、同じ間違いを繰り返してモチベーションが下がります。これでは勉強嫌いになり、勉強がただの「作業」になります。
 これを防ぐには、一人ひとりの成長段階に応じた学習プログラムを考えることが重要です。そして状況に応じてフォローアップし、うまくいかない時にはじっくりと粘り強く向き合う必要もあります。それはご家庭だけでは難しいので第三者が必要となり、だからこそ塾選びは大きなポイントになるのです。これから塾をお考えの方は、この点にも注意して、ご家庭の考えに合った塾をお選びください。
 また勉強だけでなくスポーツや芸術等、本人が興味を持ち成長できる経験をすることも大事です。バランスの良い人格形成は、その後の成績の伸びに大いに影響を与えます。現に大学入試改革では「点数が取れる学生」ではなく、「様々な学力を身につけた学生」を求める方向に進んでいます。そうなると知識・技能を伸ばすための学習時間を効果的に抑え、それ以外のことにも力を注げる時間をどう作るかが、今後重要になると思われます。
 まだ教育界では、まだ昭和の頃の精神論が幅を利かせています。しかし時代は平成を過ぎ令和になり、求められるものも変わる以上、今までのアプローチで本当にいいのか、すべての教育関係者が考えるべき時期なのだと思います。同時に保護者の方々においても、ただ机に向かわせるだけでなく、お子様のモチベーションや「何を、どのように学習するか」という面も気にして頂ければと願います。やるべきことが増えるからこそ、量より質が重視される時代になるのではないかと感じています。

【第22回】 中学校の定期テストが難しくなっている?

テスト勉強

 このコラムをお読みのお父様・お母様が公立中学校出身なら、学校の中間・期末テストには簡単な問題が出るイメージをお持ちかと思います(※苦手教科を除く)。地域や学校によって差はありますが、基本的に教科書に沿った内容が出題されるのが前提でした。
 しかし現在の日本人学校の定期テストを見ると、基本レベルの問題も出ていますが、難易度の高い問題も出題されています。解答形式も用語や記号で答える問題だけでなく、記述式も多く出されています。しかも問題の量が多いので、時間内に解き終わるのが難しいケースもあります。(実際に問題を見たお母様から「昔に生まれてよかった~」との声を聞いたこともあります。)
 その理由として2つの要因が考えられます。1つは「高いレベルの競争への対応」です。日本人学校生の学力レベルは全国平均よりも高く、しかも大都市圏以外の地域に戻る(=公立高校を目指す可能性が高い)生徒もそれなりにいるので、内申点が重要になるから定期テストに全力を注ぐ生徒が多くなります。そこで高得点を出す生徒が多くなると5段階の評定がつけづらくなるので、問題を難しくして点数が下がるようにするのです。
 もう1つは「新しい学力観への対応」です。従来の「知識・技能」だけでなく、読解力や思考力・表現力を問う問題も加わっています。例えば数学では、長い文章や資料を読んで答える問題や、数値だけでなく途中の式や考えを書かせる問題が出されています。これは高校入試も含めた全体的な傾向であり、大学入試改革の話にもつながっています。
 以上の話から、現在の日本人学校の定期テストが難しくなっているのをご理解頂ければと思います。もしお子様が定期テストで低い点数を取ったとしても、その理由がご本人の能力・努力だけではないケースも多いのです。また各教科とも、中1よりも中2・中3、第1回よりも2・3・4回と進むにつれて難しくなる傾向があります。どの生徒も努力している以上、点数については思った通りにいかないことが多いとお考えください。
 定期テストや入試の問題を通して、求められる学力が変化していることを実感することが多々あります。一夜漬けの丸暗記で対応できるような時代は終わり、これからはより多様で実践的な問いに対しても答えられるよう準備する必要があります。「短期間よりも長期間」「詰め込みよりも考えること」の2つは、これからの定期テストを考える上でポイントになると思われます。そして私たち大人側が過去の経験に基づいた考えから脱却し、これからの状況に合わせたアドバイスや学習環境を与えることも重要だと感じています。

【第23回】 第2回アクティブラーニング合宿に行ってきました!

駅 列車

 学習空間NOAHは10月13日・14日に「第2回アクティブラーニング合宿」を行いました。アクティブラーニング合宿は、次のような力をつけることを目指しています。

・総合的な学習テーマに時間をかけてじっくり取り組み、深いレベルでの理解を目指します。
・グループワークやプレゼンテーションを通して、協働性や表現力など「新しい学力」を身につけます。
・タブレット等を用いた資料作成や調べ学習を通して、IT技術を伸ばす機会を提供します。
・体験学習等を通してタイについて学び知り、今後の入試での作文・面接対策に役立てます。

相談 集合


 今回のテーマは「交通」。まずは宿泊先のチャチューンサオまで、タイの国鉄に乗って移動しました。楽しい旅行の始まり~と思いきや、実はもうここからグループ学習は始まっています! 生徒たちは「タイと日本の鉄道の違い」について、駅や列車の中で話し合いながら、タブレットを使ってプレゼン資料を作っていました。
 合宿所に到着したら早速発表を行い、環境問題や国際貢献も絡めながら2日間で3つのプレゼンを行いました。これに加えて夜の時間は「質問教室」として学習時間を設け、グループ対抗でゲームも行い、学年をこえてカードゲームや枕投げを楽しみ(?)、盛り沢山の内容であっという間の1泊2日のスケジュールを終えました。
 一般的に塾の合宿は「〇〇時間勉強」のような内容が多いのですが(「それなら塾の教室でやればいいじゃん」というツッコミはさておき)、学習空間NOAHではただ勉強するだけでなく、幅広い学力を身につける必要性を常に考えています。特に今回は内容だけでなく発表での表現力にも注目して、生徒たちのスキルアップを目指しました。この経験が間近に迫る入試から将来の仕事まで、様々な場面につながることを願っています。
 また来年もアクティブラーニング合宿を実施する予定です。ご期待ください!

【第24回】 英語民間試験導入が延期に!

テスト勉強

 大学入試の新テストから英語民間試験が導入される予定が延期されました。報道されているように、実施するには様々な問題があり、これらをクリアするには準備期間が足りないのが現状でした。この影響で、学校現場の先生・生徒たちは振り回されて、ますます不安が広がっていますが、この動きを踏まえて今後の方向性を考えたいと思います。
 まずは改めて「なぜ大学入試改革が必要だったのか?」を振り返りましょう。知識偏重で実用性に乏しい今までの教育内容と入試制度では、今後の世界を生きる上で必要となる力は身につかないという危機感があり、「ゆとり教育」をはじめとする様々な改革が実施され、失敗し、結局は大学入試を変えない限り教育現場は変わらないという結論に達しました。
 しかし共通一次から数えて四十年続いたセンター試験のような大規模なシステムを改革するのは簡単なことではありません。それに加えて、じっくり議論せずに話が急に進んだこともあり、国民の世論も今回の改革に消極的な声が多いのが現状です。「このままでは世界の流れに遅れてしまう」という経済界や政府側の懸念は、国民全体に共有されていないのです。
 さらに「公平性」も問題となりました。英語民間試験は、地域によって受験機会が大きく異なり、受験料を考えたとき複数回受験は家計に負担がかかります。異なる民間試験の結果をどのように比べるかも不明瞭です。これに加えて新テストから導入される予定の記述問題についても、多くの人員が必要な中、統一した基準で採点できるか疑問視されています。
 やはり日本人は、公平であることを大前提にしたいから画一的な制度を求め、明確な基準が見えないと不安になるから細かい「一点刻みの判定」を信頼し、混乱を避けたいからできるだけ今までのやり方を変えない傾向が強いように感じられます。多様性を尊重し、変化する状況に対応しようとする世界の流れとの違いを感じます。
 このような不確実な状況で、未来に向けていま何をすべきでしょうか。たとえ英語民間試験が新テストで使われなくても、スコアを持っていれば各種入試でチャンスは増えますし、4技能を身につければ将来活躍できる場は広がります。たとえ記述問題が新テストで出されなくても、自分の考えを求められる機会は入試でも実社会でも増えています。
 日本にいる人たちに全部合わせる必要はなく、むしろ違うことに価値があると考えてもいいのではないでしょうか。子どもたちにはこの海外での生活を通して多様な力を身につけてくれたらと願いますし、そうなるように大人側が幅広い観点から応援することも大事だと思います。(ただし学年相応の基礎学力を身につけることが大前提です!)

【第25回】 教育格差は広がるのか?

テスト勉強

 英語民間試験を導入するにあたり、「都市部より地方に住む受験生が不利になる」「受験料が高いので所得が低い家庭の生徒が不利になる」という不安の声が多く挙がり、「教育格差」が問題とました。これは以前から分かっていたはずのことで(マスコミが今頃になって問題視することはさておき)、なぜそのような問題を承知の上で導入しようとしたのかを改めて考えてみましょう。
 まず「このままでは日本は後れをとる」という危機感が挙げられます。世界に通用する人材をできるだけ早く育成する必要は、経済界だけでなく様々な分野で叫ばれています。しかし「世界に通用する人材」は日本人全体ではなく、ごく一部が対象です。トップレベルの人材をできるだけ多く発掘できるよう、大学入試で全体にチャンスを広げていますが、最終的に必要なのはごく一部の人材です。
 今までの日本の教育では、みんなが同じ教育を受けるのが前提だったから、「すべての学生が英語を話せるようにならなければいけないのか」と思う人もいますが、そうではありません。画一的な教育では、急激に幅が広がる世界に対応できず、高いレベルの内容を全体に行うのも無理があります。時代の変化と共に、教育の内容だけでなく、方針や対象も変化するのです。学習指導要領にしても、以前は「ここまでしか教えてはいけない」だったのが、今は「最低限ここまでは教える」、つまりそこから先は制限されていないのです。
 そうなると「学びの質」が重要になります。本来はどの学校でも高い質の学びを提供すべきなのですが、それを全体に求めるのは無理であり、現実はそのような教育をできる場を選ばなければいけません。そこで「選べるかどうか」によって格差が広がる可能性は大いにあります。そしてそのポイントは各家庭の財力だけではなく、情報を得て、方針を決め、長期的に育てる視点があるか、だと思います。特にこの中で一番重要なのは、新しい情報を得ることです。
 いろいろな学校が日々改革を進め、状況が昔と比べて大きく変化しているので、今までの先入観やブランドではなく、「いま何をやっているのか」に注目すると、これからの時代に向けて必要な教育が見えてくると思います。その点においても、いろいろな学校を見学し、説明を聞くことは今まで以上に重要だと思います。同じように塾選びも、ご家庭のお考えに合うところをしっかり見極めるために、いろいろと話を聞いて、比較検討することが重要です。多くの学習塾で、これから新年度が始まりますので、是非チェックしてみてください。