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教育コラム 「先生、その教育もう古いです!」

【第26回】 共通テストへの記述問題導入も見送りに!

記述添削

 大学入試改革のニュースが多く登場する中、今度は共通テストで国語と数学に記述問題が導入される予定が延期されることが発表されました。英語民間試験の導入見送りの時点で、この記述問題も導入見送りにすべきだという意見が多く出ていましたが、実施するにあたっての問題点(採点する人員の確保、採点のバラツキに対する不安等)が解消されない以上、この決定は当然だと思われます。
 しかしこれによって、いろいろな問題の解決が先送りされました。まず英語民間試験や記述問題の導入は「延期」されたのであって、5年後から実施する予定で引き続き動いています。延期の原因となった運営上の問題点がそれまでに解決できる保証はなく、また同じように現場が振り回される不安が残ります。
 また大学入試が従来通りの内容に戻れば、それにつながる高校レベルでの教育内容も従来通りになり、「新しい学力」も骨抜きとされる可能性があります。以前起きた問題(例えば入試対策を優先し履修すべき教科の授業を高校で実施しなかった等)のようなことがまた起こるかもしれません。
 確かに国公立大学で二次試験で論述問題が出されていれば、一次試験の共通テストで記述問題を導入する必要はありません。また大規模な入試では(採点の都合上)定型化した問題しか出せないので、これでは記述問題の意義が薄くなります。だがこのような突破口がないと今まで通りの入試および教育内容になり、子どもたちがこれからの世界で必要とされる力を身につけられるチャンスが無くなってしまう気もします。
 実際のところ中学・高校・大学の各入試で、思考力や論述力、英語力等を問う入試が年々広がっています。学校側としては、今までの知識・技能レベルを前提としながら、多様な力を持ちより主体的に取り組める生徒・学生を集めたいのです。さらに今後は、各種入試の一部ではなくメインの方式として実施されるところも増えるでしょう。例えば早稲田大学政治経済学部や慶應湘南藤沢高等部の入試はその一例となります。
 学校・学部単位の入試ならば論述中心の選抜方法に十分対応できるので、これから新しい入試方式を導入する学校は増えるでしょう。パターン学習のような旧来の受験勉強では太刀打ちできない入試には、直前の対策ではなく中長期的な観点での準備が必要です。幅広い選択肢を持てるようになるために、そして今後の世界で通用できる力を身につけるために、「新しい学力」をどのように養うかを一人ひとりが主体的に考える必要があります。国の政策に振り回される側ではなく、自立して選べる側になるためにも。

【第27回】 日本の教育に多様性は身につくか?

多様性

 今までの日本の教育は、全体の教育レベルを底上げし、全体が高いレベルで働くことで国としての生産力を高めてきました。ただしそれは高度経済成長の時代での話であり、産業構造は様変わりし、周辺諸国も発展しています。時代の変化に合わせて教育の中身やスタイルも変わっていく必要はあるのです。
 そこでポイントになるのが「多様性」です。画一的な教育では、急激に幅が広がる世界に対応できなくなっています。もちろん最低限の知識は必要ですが、それを踏まえていろいろな場所で活躍できる多様な人材を育てられる教育システムを作るべきなのです。理想を言えば、一つのモノサシだけでなく多様な基準で能力を測り、各個人の特性に合った能力を身につけられるよう、学校をはじめとする教育現場が指導できれば、チャンスを得られる人が多くなるはずです。
 しかしそのような「多様性」を全体に求めるのは難しいものです。まずは日本のような規模が大きい国では、明確なシステムを作り、その方向に合わせないと、混乱が発生します。さらに日本の場合、皆で同じことをすべきという感覚(=同調圧力)が国民性として根強くあるので、理念として「多様性」を掲げていても、実際の行動や反応は逆の方向に進んでしまいます。
 そのような面が、今回の大学入試改革に対する反応で出ているような気がします。「今まで通り、皆が同じようなマークシートの問題を解いていけば十分ではないか。」という声はコメント欄で多数派を占め、今までとは異なるシステムを導入することに強い抵抗感があることを感じます。確かに入試は生徒の進路がかかっている以上、間違いなく公正に行われるべきであり、その点でマークシート方式は優れた方式であると言えます。そしてセンター試験がマークシートであっても二次試験で記述式の問題を出せば、学力のバランスも測ることができます。
 今回の話を通して、私は「そもそも皆が同じテストをする必要があるのか?」という疑問を徐々に持つようになりました。大きなシステムを変更しようとすると無理が生じ、時間もかかり技術の進歩に追いつけなくなるのではないか。国公立も含めて各大学が、それぞれ独自の入試を進めればいいのではないか。確かに足並みを揃えることによるメリット(公平性やコスト等)はあるが、そこまでこだわらなくてもいいのではないか、と。
 今まで私たちが理想としていた「効率的なシステム」は、多様化する時代には不向きなのかもしれません。良い教育を実現するには、今まで以上に時間や費用がかかるのかもしれません。そのような点においても、私たち大人側の意識改革が求められているのかも、と考えています。

【第28回】 オンライン授業をやってみた!

オンライン学習

 コロナウイルスの影響で、日本では多くの学校が休校になり、バンコクでも日本人学校の臨時休校や、該当国から戻ってきた生徒が2週間登校できない等、いろいろなことが起こりました。そこで登校できない生徒への対応策としてオンライン授業が実施されていますが、私たち学習空間NOAHでも算数・数学で試験的に導入してみました。
 実際にやってみたところ、オンライン授業は何も問題なくできました。ふだん授業を行っている教室にPCを置き、ボードを映し出し、通話もでき、生徒の顔も見ることができます。設定も面倒なことはなく、簡単に接続できます。生徒たちはいつも通りに授業を受けているのと何ら変わりない感覚で参加していました。
 しかし何人かの生徒に参加してもらう中で、このオンライン授業が成功するために必要なポイントが見えてきました。まず生徒たちはふだんの授業に参加しているから、講師の声が聞きづらかったり、板書が見づらかったりしても、大体分かってしまいます。逆にふだん通っていない生徒がいきなり初回からオンラインで参加したらやりづらく感じるかもしれません。
 また今回はどの生徒も算数・数学に対する学習意欲と学力が十分にあったので、学習内容が理解でき、いつも通りの流れに乗ることができたのです。生徒によっては、教科に対する苦手意識があったり、基礎学力が足りなかったりします。そのような生徒にとっては、オンラインでは授業の流れに乗るのがいつもより難しくなるかもしれません。
 そして学習内容自体は理解できても、オンラインはふだんの授業に比べれば面白さが少なくなるようです。周りの生徒とのやり取りや、場の雰囲気の共有など、生徒にとってモチベーションにつながる部分が欠けてしまうのでしょう。だから日頃の授業に比べると「8割程度の満足感」という感想も聞こえました。
 今回の経験を通して私たちが感じたのは、「オンライン授業は広がっていく」が、同時に「集団授業の必要性が再認識される」ことです。動画配信やスカイプ等も含め、よりオンラインでの教育サービスは広がるでしょう。利便性や効率性も含め、活用できる可能性はまだまだありそうです。しかしどうしても同じ場にいないから伝わらないものもあり、これが現段階でのテクノロジーの限界なのだと思います。
 現代はSNSが生活の中で多くの時間を占めているからこそ、生徒たちにとっては直接的なやりとりがより刺激的で楽しく感じるのかもしれません。私たち大人が当たり前のように感じている教室での授業は、実は今の子どもたちにとってより重要なものになるのかもしれません。

【第29回】 休校になって何が変わるか?

コンピューター疲れ

 タイ政府の指示により3月18日よりすべての教育機関が休校となり、学習空間NOAHでも3月集中授業(春期講習)をオンライン授業に切り替えました。前回コラムの時点では一部の生徒がオンラインで参加する形でしたが、今度はすべての生徒がオンラインで受講することになりました。そして4月下旬より再開される通常授業でもオンライン授業を行います。
 授業の形もいろいろと変わりました。最初は生徒のいない教室でカメラに向かって授業をするのは私たちも戸惑いましたが、ホワイトボードだけでなく様々なツールを使って、今までとは異なる効果的なアプローチも発見することができました。のべ300時間以上のオンライン授業を実施して、今後に役立つポイントがいろいろ見えてきました。
 同時に問題点として、長時間コンピューターの画面に向き合うことでの疲れや集中力の低下が見受けられるようになりました。自宅から出ることができないストレスやITに対する慣れもあり、私たちも同じように疲れを感じたものです。このような点を踏まえて、できるだけお子様やご家庭に負担のかからない時間設定や学習システムを考えています。
 ところでタイ教育省からの発表(4月上旬時点)ではタイの学校は6月いっぱいまで休校となります。先行きが不透明な中、この状況がさらに長期化する可能性もあります。ここで気をつけたいのが、学習習慣を崩さないことです。3月から長い休みに入り2カ月経つと、まじめな生徒でも自宅学習に限界が出てきて、ご家庭での学習ペースを維持するのが非常に難しい時期になっています。
 実はバンコクでは9年前に洪水で多くの日本人家庭が約1カ月一時帰国されたとき、同じようなことが起こりました。慣れない生活環境で学習のペースが作れなくなり、塾に通えないから学習量が大幅に減り、タイに戻ってきたときにはカリキュラムに遅れるだけでなく基礎学力も低下して…というケースが少なからず見受けられました。この影響は数カ月に及ぶので、受験学年だけでなくそれ以外の学年でも要注意です。(しかもあの時は1カ月でしたが、今回は…)
 そして9年前と大きく異なるのは、世界中のどこでもオンラインで学習できるようになっているから、バンコクでも日本でも「いま何をするか」がポイントになることです。塾のオンライン授業等を受けていれば学習習慣がある程度作れますが、そのような外側からの働き掛けがないとこれからの数カ月で学力の差が大きく広がる恐れがあります。気になるご家庭は、お早めにご相談ください!

【第30回】 オンライン教育はどんどん進化している!

オンライン授業

 世界的に広がる新型コロナウィルスは、教育の世界にも大きな影響を与えています。休校措置が長期化し、この先も断続的に様々な措置が取られることが予想される中、いま子どもたちの学びの場をどのように確保するかはとても重要な問題となっています。そしてこれを解決するには、オンライン教育が重要なツールになっていることに間違いはありません。
 ところで「オンライン教育」といってもいくつかのタイプがあり、それぞれの方式にはメリット・デメリットがあります。まとめると次のようになります。
 ① 課題提出型…課題に対してレポートを返信する形。各自のペースで取り組めるが、指導がなければ自習と同じ。
 ② オンデマンド配信型…授業動画等を視聴する形。繰り返し見ることができ理解しやすいが、これだけでは一方通行。
 ③ ライブ配信型…ZOOM等を用いた双方向授業。やり取りや質問ができるが、通信環境への負荷が大きく、影響を受けやすい。
 日本人学校の場合、先生の人数やすべてのご家庭の通信環境を考えると、③まで対応するのは非常に難しいです。逆に学習塾では③が中心になりますが、今までの授業スタイルをすべてオンラインで再現することは難しいものです。
 このように様々な制約を受ける中でオンライン教育は進んでいますが、一つはっきり言えることがあります。それは生徒も先生も新しいスキルを身につけ前進している、ということです。試行錯誤は多々ありますが、その失敗を糧に次に向けての改善策を考えることは、むしろ何も失敗しないよりも学べているのかもしれません。
 お子様やご家庭の中には、オンライン授業に対する不安をお持ちの場合もありますが、まずは失敗していいから始めることを強くお勧めします。現時点での経験の積み重ねが、数か月後・数年後に大きな差になって表れることが十分予想されるからです。それは学力だけでなく、ITスキルやモチベーション等いろいろな要因も含めて、今後普及するであろうオンライン教育だけでなく日常生活でも大きな格差につながる可能性があるからです。
 学習空間NOAHも日々新しい教育の形に挑戦しています。例えば英語・数学・算数ではオリジナル予習・解説動画を作成し、授業に活用しています(YouTubeにアップしていますので、ご興味のある方はご覧ください!)。このような動画とZOOMでの双方向授業や質問教室を組み合わせて、より効果的なオンライン授業を目指しています。まだスタートしていない皆さんも、私たちと一緒に新しくチャレンジしてみませんか?