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教育コラム 「先生、その教育もう古いです!」

【第11回】 数年後の大学入試はどのような世界?

添削

 前回のコラムで、中学受験の英語入試で受験者数が急増し、競争レベルも大幅に上がっていることを書きました。今回はその続きで・・・となると、「中学受験や英語入試はしないから、うちには関係ない」と思われる方も多いでしょう。実は今回の話、むしろ「関係ない」と思われている皆さんこそ必読です!
 前回の話を踏まえて、数年後の大学入試の世界を想像してみましょう。中学受験の英語入試で合格し、中高一貫の特別カリキュラムで6年間学習する生徒たちは、さらに英語力が伸びることが予想されます。そして大学受験で、彼らは他の生徒と同じ土俵で競い合います。しかもその時には「実用的な英語力」が問われます。今までより各生徒の英語力の差は拡大し、それが大学受験で決定的な差につながるのです。インター校生は学校生活や英語入試等を通して英語力を伸ばせるチャンスがありますが、そこまで多くの時間を英語に割けない日本人学校生は英語力とは別の力を身につける必要があります。
 そこで「論述力」が重要な候補になります。数年後の大学入試改革から論述形式の問題が増える予定ですが、このタイプの出題形式は解法テクニックが通用しない本物の学力が試されます。文章の内容をしっかり理解し、自分の考えを筋道立てて述べるには、幅広い基礎知識を身につけ、会話や記述を通してアウトプットの練習を重ねる必要があります。そのような力をつけるには時間がかかるので、準備は今から始めても遅くはありません。学習空間NOAHでは小・中・高それぞれの学年を対象に作文・小論文の授業を行なっていますが、入試対策として直前に受講するのではなく、未来を見据えて早い段階から取り組む生徒が徐々に増えていると実感しています。
 このように今までの大学入試とは異なる世界になるので、まずは「どのような学力が求められるのか」について早めに情報を得ることが大事です。今回の教育改革は、一番のポイントとなる大学入試を大きく変えるので、小・中・高すべての学年に影響が及びます。まだ詳細が決まってない面もありますが、情報を得ることによって見えてくるものも多々あると思います。それを踏まえて、これからどのような世界になるかを想像し、それに向けてどのような対策を進めるかを考えることが、今こそ必要かと思います。

【第12回】 この1年間で大学入試改革はどこまで進んだか?

願書

先日行われた「大学入試改革」に向けての教育講演会には、多くの保護者の方々にお集まり頂きました。そこで出てきた話の中で、ぜひ皆様に知って頂きたいことをいくつか書きたいと思います。

1.2020年度から大学入試が大きく変わる
 センター試験が「大学入学共通テスト」になり、マークシート式に加えて記述問題が登場します。先月行われた試行調査でも、国語では3問の記述問題が出され(一番多いのは80字以上120字以内)、数学でも同様に出されています。問題の中身も、複数の資料を読み取り、情報を統合・考察する力が問われ、マーク式では正答が複数ある(または正答がない)問題が出ています。また日常生活や社会とのかかわりが題材となる問題も増えます。英語民間検定試験の導入だけでなく、試験の中身も大きく変わるのです。

2.今までの学力を前提に、新しい学力も問われる
 これまでの日本の入試は、学力の3要素の中で特に「①知識・技能」が重要視されていましたが、これからは「②思考力・判断力・表現力」と「③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」も問われるようになります。一般入試は筆記試験の点数で決め(①を重視)、AO入試(総合型選抜)や推薦入試(学校推薦型選抜)は学力試験を課さない(②と③を重視)傾向が今まではありましたが、今後はどの入試でも学力の3要素が求められるのです。さらに入試改革以降、国立大はAO・推薦入試で定員の3割を募集するようになります。3つの学力をバランスよく身につけることで、幅広い選択ができるようになるのです。

3.中長期的な取り組みが評価の対象になる
 「③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価する資料として、学校からの推薦書だけでなく、活動報告書・大学入学希望理由書・(大学入学後の)学修計画書等、本人が作成する資料も出願時に求められるようになります。例えば京大の特色入試では、中学から現在までの学びの活動についての記述も求められます。海外にいる間に経験したことや頑張ってきたことも、評価の対象になり、活かせるのです。

 旧来の「①知識・技能」に偏った勉強だけでは不十分で、①を踏まえて②や③の学力を身につけることも必要です。今までと比べて、子どもたちには多くのことが求められ、そのための準備期間も長くなります。その結果、生徒間の学力格差はますます広がるでしょう。そして保護者の皆様がどのようにお子様の教育に関わっていくかがカギになるのです。

【第13回】 これからの教育現場に講師は必要ない?

焦る先生

 いつの頃からか、予備校の有名講師の講義はオンデマンドで視聴できるようになり、個別指導では一人ひとりの弱点に対応した内容をすぐプリントアウトできるシステムが定着しています。インター校ではタブレットやノートパソコンが1人1台ずつ提供されていて、学習空間NOAHでも低学年向けの「Think! Think! 講座」でタブレットや映像を利用した授業を実施しています。このようにテクノロジーの進化は教育の現場にも大きな影響を与えていますが、今後はAIが教育現場に進出し、授業も今とは異なる新しい形になることが予想されています。
 そうなると、最先端のテクノロジーを駆使した「新しい教育」が中心になり、今までのように先生が教室で授業をする「古い教育」は消えてしまうかもしれません。(ちなみに最近よく話題になっている「10年後になくなる仕事リスト」に塾講師も載っているようです。ひえー笑)
 確かにより多くの子どもたちが最先端の技術に触れられるよう、そして一人ひとりに対応した学習プログラムが提供できるよう、これからの教育現場は新しいテクノロジーを導入する必要があると思います。(実際には予算等の都合で公立校の現場に普及できるかは疑問で、私立校との格差がますます広がる可能性がありますが。)
 しかし授業に関しては、先程の例を振り返ってみても、今までの授業に代わるメインにはなっていません。テクノロジーにはまだ弱点があるのです。
 例えば予備校講師のオンデマンド講座は、内容も非常に分かりやすく、一時停止や巻き戻しもできるので便利なのですが、それをPCで見ていてもあまり面白くないのです(※感想には個人差があります)。それは多分、教室内での生徒とのやり取りや周りの生徒との一体感等を含めた「熱気」が感じられないからなのです。(学習空間NOAHは「授業はライブ!」というこだわりを持っているので、余計にそう感じるのでしょう。)
 同じような面が、PC対応型の個別学習にもあります。学習内容で弱点があれば即座に対応できますが、表示されるメッセージはあくまでも定型文で、それで生徒が学習に対するモチベーションを上げられるかといえば、まだ弱い気がします(※これも感想には個人差があります)。だからこのような学習形式でも、チューターの存在やアドバイスが必要になるのです。
 生徒たちが学ぶとき、その内容だけでなく、どのような気持ちになるかも大切な要素です。学習空間NOAHは、これからのポストAIの時代を生きる人間には「モチベーション」「コミュニケーション力」「人間らしさ」が求められると考えています。そのような要素を盛り込んだ授業こそ、これからの時代では必要になると考えています。

【第14回】 日本式の英文法は役に立たない?

英語授業

 英語の能力を4技能(読む・書く・聞く・話す)によって評価するよう、遅ればせながら日本も大学入試改革から民間試験のスコアを導入するようになります。日本では各種試験のスコアをどのように扱うか等の議論が行われていますが、要は今までの入試英語では「使えない」ので変えなければならないのが根本的な問題であり、遅かれ早かれ実用的な内容に切り替わることになるでしょう。
 ここで「何を変えるか」がポイントになります。今までの大学入試では、重箱の隅をつつくような文法問題が出されていましたが、そのような例から「日本の受験英語は文法に偏っている」という批判が出ていました。確かにマニアックな英文法に精通していても話せなければ実用性はありません。その点を踏まえ、会話等のコミュニケーション能力を伸ばせるよう、日本でも小学校から英語の授業が実施されるようになりましたが、時間数が少ないのでそれだけでは英会話ができるようにはなれません。それに対してインター校は英語が学習言語になるので、数ヶ月すれば英語で話せるようになります。
 しかし「英語が話せる」ことと「英語を構造的に理解する」ことは別の話です。英語で会話するとき、文法を気にするより意味が通じるかが重要なので、間違ったクセが身につくこともあります。実際にインター校生が英語のテストを受けても、すべての生徒が高得点を取れるわけではありません。日本式の問題形式に慣れてない場合もありますが、基本的な知識が欠落していることも多々あるのです。それでは将来的に英語力が伸びなくなってしまうので、できるだけ早い段階で正しい型を身につける必要があります。また小学生からインター校に通っている生徒の場合、中学受験で英語を利用した入試を受けられるチャンスが広がっているので、早い段階からテストに対応できる英語の学習を意識したいものです。
 学習空間NOAHでは、「スピードマスター英語」を開講しています。この講座では、中学3年間分の英文法を1年間で学習するので、英語には慣れているが(または英検で上位の級を受験するが)英文法は学習したことがない生徒にはちょうどいいプログラムです。小学生・中学生を問わず、インター校生・日本人学校生も問わず、必要な時期に必要な内容を学習できるように設定しています。(文法の理解や論理的思考力の段階を考え、対象学年は小4以上を想定しています。)
 大学入試改革で今までの「知識・技術」が前提となるのと同様に、これからの時代で必要とされる「バランスのよい英語力」を身につけるためにも、まずは基本が大切です。「英語に慣れる」レベルより上の英語力が求められるならば、早い段階から英文法の学習をすることをお勧めします。

【第15回】 中学受験・高校受験の勢力図が大きく変わった?

平成から令和へ

 令和になるにあたり、平成の30年間を振り返る話題が出回っていますが、その中に中学受験・高校受験の難易度ランキングが大きく変動したことを紹介する記事が出ていました。30年前には目立たなかった学校が今では難関校になったり、逆にかつての名門校が低迷したり、その変化には改めて驚くものです。昔も今も変わらない学校もありますが、特に都市部の私立校は大きく様変わりしています。
 よく進路面談で受験校をお薦めするとき、その地域で育ったご両親の中には、学校名を聞いて明らかに難色を示されることがあります。その気持ち、分かります。昔はヤンキーが多くて、文化祭に行ったが怖くて足を踏み入れられなかった学校が、今では東大合格者を出すような進学校になったと聞いても、私だって信じられません(実話です笑)。
 そのような変化が起こった学校の多くは、何らかの改革を行っています。よくあるのが「共学化」「新校舎移転」「新コース設置」ですが、それだけでなく外部への発信力を高めたり、内部においても教育の質を高めたりしています。今までの伝統を尊重しつつも、時代の変化に対応した教育を取り入れています。いろいろな中学・高校の先生とお話させて頂くと、その努力が伝わってきます。
 またこの改革の中には、「帰国生」も重要項目となっています。帰国生入試で多くの生徒を集めている学校の多くは、国内の一般入試でも人気が上昇しています。帰国生を積極的に取り込むことで、英語のレベルを引き上げ、大学合格実績を上げる狙いがありますが、それはこれからの教育や大学入試改革の流れに合っているともいえます。
 でも結局大事なポイントは、「学校の教育方針」と「日々の活動の積み重ね」だと思います。目に見えて分かりやすいものばかりではありませんが、雰囲気は学校を見学すれば伝わりますので、日本に一時帰国する機会があればお子様と一緒に学校にもぜひ足を運んでください。(特にソンクラン休みの時期は気候もいいのでオススメです。)
 このような変動は、大学入試改革でさらに進むでしょう。いま見ているランキング表も十年後には様変わりするでしょう。昔のイメージやブランドだけでなく、現在の偏差値ランキングや大学合格実績も当てにならないかもしれない時代になります。だから私たち大人は今まで以上にしっかりと準備しなければいけません。学習空間NOAHでは、お子様やご家庭の状況を踏まえたアドバイスを中長期的な観点からお伝えできればと思っています。「受験はまだ先」というご家庭こそ、ぜひご相談ください。

【第16回】 帰国生入試は一般入試より楽?

情報をGET!

 バンコクにお住まいのご家庭の中には、赴任期間中にお子様が受験を迎えるケースも多いかと思います。受験より前にご帰国されても、滞在年数や帰国後の年数によっては「帰国生」として受験できる可能性が十分あるので、「受験はまだ先」とお考えの場合でも帰国生入試のしくみや情報は知っておきたいものです。
 さて皆様は「帰国生入試」について、どのようなイメージをお持ちでしょうか? 一般入試よりも楽で合格しやすい印象をお持ちの方が多いかもしれませんが、現実はそう甘くはありません。はっきり言って、昔に比べて厳しくなっています! その理由は次の通りです。

① 帰国生が増加している
 この十年間、帰国生の人数は増え続けています。帰国生入試を実施する学校も増えていますが、人気の高い学校には受験生が集まるので競争レベルは上がります。しかも募集定員が多くないので、受験者数が増えると倍率は一般入試より上がりやすくなります。人気のある学校では実質倍率で5倍を超えることもあります。

② インター校・現地校生が増加している
 さらに分析すると、日本人学校生の人数は横ばいなのに対し、インター校・現地校生の人数は大幅に増加しています。英語で学習してきた生徒が増えることで帰国生全体の英語レベルが上昇し、競争レベルが高くなります。特に中学受験では英語入試を導入する学校が急増していますが、帰国生だけでなく国内生でも高い英語力を持つ生徒が増えているので、急激に競争レベルが上がっています。

 このように挙げてみましたが、帰国生入試に長年携わっている私たちでも、この数年の変化は予想以上のものとなっています。ひと昔前なら「帰国生入試なら楽だ」と言えた学校でも、今は一般入試とほぼ同じ問題レベル・競争レベルとなっています。「インター校に通っているから英語入試なら大丈夫」というのは、もう過去の話です。人気のある学校への受験では、帰国生のアドバンテージは「入試の回数が多い」だけと考えた方がいいでしょう。
 この現状を踏まえて、お子様の学習に対してどのように動くべきかをご検討頂ければと思います。バンコクに来たばかりだと、「もう少し落ち着いてから」とお考えかもしれません。その気持ち、分かります。・・・でも他の海外都市の方はすぐに動き始めていることをお忘れなく! 最新の情報を得て、早めに行動に移すことを強くお勧めします。

【第17回】 算数・数学が入試では決め手になる?

数学者

 受験指導でよく言われることの一つに「算数・数学を制する者は受験を制す」という言葉があります。学校によって差はありますが、算数・数学は点数の差がつきやすい科目なので、ここで点数を稼げると(たとえ他の教科が多少弱くても)合格の可能性が高くなるケースがあるのです。
 このような話をすると、よく「うちの子は算数・数学が苦手なので…」とおっしゃる方が多いのですが、そんなことはありません! 受験に向けての算数・数学は、出題されるパターンがある程度決まっているので、最初のうちはできなくても演習を繰り返せばできるようになります。超難関校でなければ、このようなパターン学習を積み重ねることで入試問題に対応できるようになり、合格ラインに届くようになります。
 受験に向けての算数・数学で最低限必要と思われるものは、学習習慣、無理のない学習期間、志望校に対応した学習内容レベル、講師の指導力です。これに加えて、学習内容を楽しいと感じられる授業や、周りの友達との競争があれば、さらに効果的です。もちろん基礎学力は必要ですが、才能やひらめきはなくてもほとんどの受験には対応できますし、それよりも「努力できるか」がポイントになるのです。
 さてここからが本題です。最近の帰国生入試を見ていると、以前と比べて難しくなっている学校が見られます。もし受験者数が急増していなければ、次の二つの理由が考えられます。一つは皆できるようになって差がつかなくなり、合格最低点が上がっている場合。もう一つは、今までよりも読解力や思考力、表現力が求められ、問題自体が難しくなっている場合です。
 大学入試改革を意識して、学校側はできるだけ幅広い学力を持つ生徒に入学して欲しいと考えます。そうなるとパターン化された「知識・技能」だけでなく、より多様な出題形式が登場することが予想されます。そこでポイントになるのは「国語力」で、これは受験対策だけでは対応し切れない、長期間にわたっての積み重ねが必要になります。例えば小さい頃からの読書習慣や、ニュースを通して持つ現代社会への興味・関心、あるいはご家庭の中での会話等も下地となります。
 こう書くと、「これからは算数・数学ではなく国語をやった方がいいのか~」とお考えの方もいるでしょうが、そうではありません! これからの受験でも、パターン化された学習(=知識・技術)は大前提で、それを踏まえて多様な学力が問われます。これからの教育は「AかBか」ではなく「AもBも」求められます。長期的な視野を持って、一緒に準備していきましょう。

【第18回】 アクティブラーニング合宿に行ってきました!

エビ養殖場 グループ発表

 今までは、単語や公式を覚え解法を身につける、いわゆる「知識・技能」が絶対的な学力とされていました。しかしこれからの時代はこれに加え、思考力・判断力・表現力や、主体的に様々な人々と協働する力も「新しい学力」として求められ、学校現場だけでなく大学入試でも評価の対象となります。
 だがそのような学力を身につけるには、今までの授業スタイルでは限度があります。学校のように1クラスあたりの人数が多ければ発表する機会は少なくなり、主体的に動けず埋もれてしまう生徒が多くなります。それに対し学習塾は1クラスあたりの人数は少なくなりますが、テストで点数を取るために知識・技能を重視するので、ほとんどの塾では今までと同じ指導が行われています。今までの知識・技能が大前提として必要である以上、これは致し方のないことだと思われますが、このままでは生徒たちが「新しい学力」を身につけられる機会は限られてしまいます。

朝ごはん 集合写真

 そこで学習空間NOAHでは「アクティブラーニング合宿」を、1泊2日の日程で、ピンクのガネーシャで有名なチャチューンサオにて行いました。今回のテーマは「エビ」で、1日目は現地の養殖場を見学後、エビに関する論文・統計・英文を読み、内容に関する質問をグループでまとめ、タブレットのパワーポイントで資料を作成し、全員が発表しました。2日目も午前中をフルに使ってグループワークを行ったあと、作文を書いて終了しました。(こう書くとハードな内容とスケジュールに見えますが、グループ対抗でゲームをする時間もありましたので、私たち講師陣も含め全員で楽しんでいました。)
 生徒たちはエビというテーマを通して、日本とタイの関係や、環境問題、フェアトレード等を総合的に学習しました。そして現地での体験学習・グループワーク・プレゼンテーション等、今までにない学習スタイルに対して生徒たちは意欲的に取り組み、問題意識と手応えを感じたようです。このような新しいチャレンジを、学習塾というカテゴリーを越えて、引き続き楽しく実践したいと思います。

【第19回】 「協働」って何だろう?

グループ学習

 これからの社会ではコミュニケーション能力が重要になりますが、それは「英語を話せるようになる」「外国人と友達になる」というレベルではありません。お互いの考えを理解・尊重した上で自分の意見を述べ、様々な人々と協力しながら課題を解決し、新しいものを作り出す力だと言えます。これは未来を生きる子どもたちにとって必要不可欠なもので、「学力の3要素」では重要な柱の一つとして「主体性・多様性・協働性」と表現されています。
 しかし今までの日本の教育は、集団の中でルールを守ることや指示に従うことを重要とし、各個人が自分の考えを出して行動することに否定的な場が多くあります。また「知識・技能」を重視し、点数で個人の能力を判断する傾向の強い日本の入試制度では、「協働」のような異質で数値に表しづらい力を合否の判断材料として見ようとしません。特に受験は個人戦で、「競争相手に勝つ」のような考え方を大人側が煽ることもあるので、余計に「協働」のような価値観が根付かない風土になっているのかもしれません。
 このような状況に対し、特に私立の中高一貫校や大学は強い危機感を抱いています。点数を取ることだけに特化した生徒より、多様な学力や問題意識を持ち合わせている生徒の方が入学後に伸びることは、多くの先生方から話が出ています。帰国生入試には、そのような生徒を求める学校側の願いも込められているのです。(そうです、海外生の皆さんは「希望の星★」なのです!)
 確かに海外に住む生徒たちは、これまでの異文化体験等から、他の人たちと関わることに対しての抵抗感が少ないのかもしれません。私たちが実施した「アクティブラーニング合宿」では、学年も性別も異なるメンバーで班を作り、グループ単位で学習から発表まで行いましたが、予想以上に彼らはスムーズに役割分担を決め、準備を進めていました。さらに回を重ねるごとに手順もよくなり、手早くプレゼンの準備を終わらせ、さらに良い内容にしようと工夫していました。日頃の授業とは一味違う生徒たちの可能性に感心したものですが、それは「協働」という状況が触発したのかもしれません。
 帰国生全員がこのような経験を積み、コミュニケーション能力を持ち合わせている訳ではなく、様々なバックグラウンドの違いがありますが、お互いに高め合える存在になれるよう、生徒たちには様々な場を通して学んで欲しいものです。そしてそれを実現するには、周りの大人たちが様々な場を提供できるよう、意識的に動き、時には協力し合いながら作り上げる必要があるのかもしれません。もしかすると「協働」というテーマは、私たち大人にも求められているのかもしれませんね。

【第20回】 インター校生ならば英語入試は大丈夫?

インター校

 バンコクでインター校に通う生徒数は増えていて、学習空間NOAHでも約4割の生徒がインター校生となっています。そして他の海外都市でも同様にインター校・現地校に通う生徒数は増え続け、今では日本人海外子女全体の約4分の3以上を占めています。(意外かもしれませんが、日本人学校生は少数派なのです。)
 これに加えて大学入試改革で英語民間試験が導入されるのもあり、一部の私立の中学校では英語入試等を新しく導入して、インター校生を積極的に取り込もうとしています。英語ができる生徒がいればクラスの雰囲気が変わり、良い影響を与えるケースが多いからです。
 そうなるとインター校生は引く手あまたとなり、入試で有利になる…と言いたいところですが、現実はそんなに甘くありません。特に英語1科目での入試は、この2~3年間で受験者数がかなり増えて、難しくなっています! その理由は次の通りです。

・国語・算数の受験勉強をしなくてもチャレンジできるので、塾に通っていない海外生でも受験できる。
・インター校・現地校出身者が増加しても、募集定員はそのままなので、倍率が急上昇してしまう。
・一部の人気校は教育内容の中身に対する評価も高いが、それ以上にブランド化してしまい、受験生が予想以上に集まっている。
・日本国内でも英語入試対策をメインとする塾が拡大し、エッセイ等をしっかり準備して受験する帰国生が増えた。

 このように英語入試を取り巻く状況は大きく変化しています。高い倍率の競争を突破するには、インター校に通っていた年数だけでなく、文法理解や語彙力、エッセイへの対応力、そして合格に向けての計画的な努力が不可欠となっています。それでも英語圏の学校出身の生徒たちと環境の差もあるので、努力だけでは解決できない面もあります。
 もちろんどんなに倍率が高い人気校でも、ご本人が「行きたい!」と思えばチャレンジすべきです。しかし現実的に考えたとき、その学校だけをターゲットにするのではなく、幅広い学校から選べるようにしたいものです。現在は様々な私学が改革を進めています。学校名だけにとらわれない、教育内容を重視した選択ができるのです。
 インター校生にとってチャンスは広がっていますが、それ以上に競争は厳しくなっています。英語だけでなく、国語・算数(数学)も受験向けに学習すれば、幅広く受験校を選べるようになり、入学後の可能性も広がります。バンコクは英語圏ではありませんが、中学受験・高校受験に向けてしっかり学習できる環境なので、そのメリットを十分に生かしてくれたらと思います。